「ユー・ガット・メール」

2009/05/30 01:54


 作家の村上春樹氏がエルサレム賞受賞にあたり「壁と卵とでは常に卵の側につく」とスピーチしました。同じ考えかたでいくとこの映画ではキャスリーンの小さな絵本屋さんを応援しなければなりません(笑)。小さな絵本屋を結果的に閉鎖に追いこむことになった大手本屋チェーン店の経営者も実はいい人なんやけどねぇ(笑)。レンタルで米国映画「ユー・ガット・メール」(1998年。ノーラ・エフロン)を観ました。

 母親の代から続く小さな絵本の店を経営しているキャスリーン(メグ・ライアン)。彼女は、ハンドルネーム「ショップガール」で、「NY152」というハンドルネームの顔もしらない男性とメール交換することを日々の楽しみにしていました。彼女の本屋近くに大手本屋チェーン店がオープンしその経営者が「NY152」ことジョー(トム・ハンクス)であることも知りませんでした。ジョーももちろん、自分がつぶすことになる小さな店の経営者が「ショップガール」であることを知りませんでした。そんなある日、キャスリーンは「NY152」から「直接会わないか?」と提案されます。さて、ふたりは実際に会ってしまうのでしょうか?。ふたりのメール交換はどうなってしまうのでしょうか?。

 最後にはジョーがいい奴であることがわかるわけですが(笑)、村上春樹氏の話に戻ると同氏はこんなこともエルサレム賞のスピーチで言っているのです。<<私たちはみな人間です。国籍や人種や宗教を越えることができる個人です。そして「偉大なる制度」と呼ばれる堅固な壁に向きあう壊れやすい卵なのです。見たところ、私たちには勝ち目がありません。壁は高く、あまりに堅固で、そして、無慈悲極まるものです。もし何とか勝利の希望があるとすれば、それは、自分の存在と他者の存在をかけがえなく取り替えのきかないものであると私たちが確信することからであり、心を一つにつなぐことのぬくもりからです。( http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2009/02/post-1345.html )>>。映画のエンディングでキャスリーンがあることを言います。その一言に上記「ぬくもり」を強く感じることができて感動します。

 インターネットが「ジー」という音ともにダイヤルアップでつながるシーンを見るととても懐かしくなります(笑)。懐かしくはありますが、村上春樹氏による先日のスピーチを引きあいに出したくなるほど、実は新しいテーマがこの映画には掲げられていると思います。
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